2024年6月7日、参議院本会議で質疑に立った塩村あやか議員が、ある「ヤジ」について、Xに投稿しました。
「あまりにもひどい」と塩村さん。一体何があったのでしょうか。
塩村さんは2014年、都議だった頃に、鈴木章浩都議(当時)から「セクハラやじ」を受けたことがあり、このヤジ(「早く結婚した方がいい」というもの)の認識が未だに社会にあった事が 問題になっていましたよね。
今回は、どういったヤジがどういう問題になったのでしょうか。
質疑の内容とも関係していますので、あわせてお伝えしていきます。
塩村あやかさんのポストとは
参議院本会議の行われた6月7日に、塩村あやか議員がXに投稿したのは、このポストです。
質疑応答の行われている中で、「うるせえんだよ!」というヤジが飛んできたことに対するポストでした。
塩村さんが、Xに投稿するほど、「ひどかった」出来事とは、いったい何があったのでしょうか?
この日(2024年6月7日)の本会議では、子どもたちに対する性暴力の防止策、日本で遅れている性教育などについての質疑があり、塩村議員が質問に立ち、その答弁の中で起きました。
「ヤジ」を飛ばしたのは誰だったのか?どんなヤジだったのか
塩村議員に対してヤジを飛ばしたのは、自民党の議員複数名ということ、その中には、「自民党の元大臣」が含まれているということ、無所属議員が1名ということが分かっています。
今のところ、誰だったのかは、明らかになっていません。
声だけは、ハッキリ聞こえます。(国会中継 2024.6.7より)(「うるさい」というヤジは、36:50頃)
この審議は、性被害対策も人権教育も遅れている日本において、性被害対策を考えるうえで大切な質疑応答でした。
与野党で議論を詰めていく場である国会で、性被害を自分事ととらえていれば、質問者の政党が同じ政党であるかないかに関わらず、自然と「そうだ」、あるいは「もっと、こうすれば良いのではないか」という思考になると思います。
「うるさい!」という心の声は、性被害対策に興味が無い、と言っているに等しいですよね。
有権者にとっても、議員の資質を知るのに役立ちますので、ヤジを言った人が明らかになると良いと思います。
(もちろん、自民党の中にも、性被害対策について考えている議員さんもいらっしゃると思いますし、ヤジを飛ばしていなくても重要と考えていない議員もいると思います。ただ、今回のこのような「ヤジ」という行動は、有権者にとって、選挙の際に参考になりますよね。)
この「ヤジ」がひどかった、その理由は?
この日の、参議院本会議には、被害者・被害者家族も傍聴に来ていました。
塩村議員は、そのことを質問時に伝えています。
【塩村あやか議員】
先の内閣委員会で松村国家公安委員長は、被害者やその家族との面会について「予定を調整する」旨答弁されました。
被害者や家族の方々は松村国家公安委員会委員長との面会も心待ちにされています。
本日も、傍聴にいらっしゃっています。
その調整状況を松村国家公安委員長に伺います。(20:37頃)
(国会中継 2024.6.7より)
これに対して、松村国家公安委員長は、答弁の中でこう答えています。
【松村国家公安委員長】
面会についてご質問がありました。
被害を受けられた女性ご本人、ご家族からは、警察署の担当者がこれまでも貴重なお話を伺っており、このことはしっかりと報告を受けております。
現時点では調整に至っておりませんが、私としては、こうした報告を受ける中で、悪質なホストクラブについて強い問題意識を持っており、まずは厳正な取締りを引き続き行うよう警察を指導しているところであります。(36:07頃)
(国会中継 2024.6.7より)
要するに、松村国家公安委員長は、傍聴している被害者と家族の前で「警察署の担当者がこれまでも話を伺って」いるから、面会の日程を「調整しない」、「警察を指導している(から)」と、平然と答えたわけなんですね。
前回、松村国家公安委員長は面会の日程を「調整する」と言っていましたので、これには、塩村さんも、被害者やご家族も、これには驚かれたことと思います。
バッサリと切り捨てて、さっさと壇上を後にし、席に戻りかけた松村議員に、塩村さんがうったえます。
【塩村あやか議員】
答弁は何だったんですか?
被害はどんどん広がっていますよ。
ここで、最初のヤジが飛びました。
うるさいなぁ!
【男性議員の声】
うるさい? 誰だ!うるさいって言ったのは。
大事な問題ですよ!
【男性議員の声】
誰だ!うるさいって言ったのは。
【塩村あやか議員】
大事な問題ですよ!
うるさいのはうるさいんだよ!
だまって聞け!
しばし、騒然となりました。
この後に続いたのは、武見厚生労働大臣の答弁。武見厚生労働大臣は、悪質ホストクラブの被害者・家族の方々と、先月面会をしています。
【武見厚生労働大臣】
面会時にの女性が多額の借金を負わされ賠償を強要されていることなどの実態をお伺いし、事態の深刻さを改めて痛感をいたしました。
面会を通じて、こうした被害のあわれた方々の支援のために、心のケアの専門機関と連携することの重要性を改めて認識をし、相談窓口である女性相談支援センターと精神保険福祉センターの連携を推進するなど、相談体制の強化等を図ることとしております。
武見さんの答弁が終わった後に、塩村さんの声が聞こえました。
【塩村あやか議員】
ありがとうございます。
武見さん頑張ってください、
武見さん頑張ってください。
塩村さんは、武見さんにエールを送っていました。
塩村あやかさんの質問は、6:43頃から。
「うるさい」という最初のヤジは、36:50頃です。
この日の 塩村議員の質問と政府答弁の内容は?
2024年6月7日、参議院での、塩村あやか議員の質問内容と、それに対する政府の答弁をまとめています。
(国会の質疑の時系列では、まとめて質問、まとめて答弁ですが、ここでは分かりやすく、塩村議員の質問の下に、答弁を入れます。)
(※以下は、抜粋です。フルサイズ動画はこちら。質疑応答の全文はこちら。)
質問①【国連機関の勧告の受け止め・政府から独立した国内人権機関を設立する必要性】
昨年(2023年)の夏、「国連ビジネスと人権の作業部会」による訪日調査が行われ、先日報告書が公開された。
旧ジャニーズ事務所の性加害問題をはじめ、日本における様々な人権問題を指摘。国内人権機関の設立が勧告されている。
被害者の方が、世界が注目する中、我が国の人権問題について国連機関から勧告を受けている状況を、政府としてどのように受け止めているか。
国連機関が勧告する独立した国内人権機関を設立すべき。林官房長官の見解はどうか?
〈答弁〉林 官房長官
国連人権理事会の特別手続きの一つである「ビジネスと人権作業部会」等による勧告は法的拘束力を有するものではありませんが、我が国としては、関係省庁において勧告の内容を十分に検討し、必要に応じ適切に対応してまいりたいと考えております。
国連機関の勧告に対して、法的拘束力がない、とは後ろ向きですね。
「独立した国内人権機関設立」には言及がありませんでした。
質問②【ガイドライン策定までのスケジュールと策定協議参加者の人選】
日本版DBS制度を創設するにあたって。
民主党案
①子どもに関わる全ての職種を対象として対策を行う。
②過去に子どもに対するわいせつ行為をした者を、原則、二度と子どもに関わる職に就かせないようにする。
現況、対象事業・従事者の範囲・児童対象性暴力等が行われるおそれがあると認めるときの判断基準が、事実上、白紙委任である。実効性を確実に担保できる内容とすることを求む。
このガイドラインの策定までのスケジュール・策定するメンバーの人選の方針は?策定に当たっては、性被害当事者やこどもの意見も取り入れるべきだが、見解は?
〈答弁〉加藤 内閣府特命担当大臣
具体的なスケジュールや策定方法については、現時点で決まっているものではありませんが、策定時期については、対象事業者の準備期間にも十分配慮した上で、施行期日前になるべく早く整備し、周知を徹底してまいります。
その策定に当たっては、関係団体や現場の声も踏まえた実効的なものとなるよう、対象事業の所管省庁等のご協力も得て検討するとともに、当事者である子どもたちの意見も聞いた上で進めてまいりたいと考えております。
当事者である子どもたちの意見を聞く、と名言してくれました!
聞くだけではなく、きちんと取り入れていくか、引き続き、注視していきましょう!
質問③【義務化の対象となる事業の範囲を拡大する必要性】
対象事業の範囲について。
学校設置者等は義務化の対象となるが、学習塾等は認定制度の対象のため、わいせつ行為で職を追われた教師等が、認定外の学習塾で働くなどの抜け穴がある。
大手学習塾の運営会社50社に行ったアンケートでは、任意の認定制度の対象となることに「反対」した企業が15社あり、本法律の対象外となる個人塾や個人音楽教室からは、認定制度の対象にしてほしいとの希望がある。
政府においてどのような議論が行われたのか?加藤大臣、お答えください。
〈答弁〉加藤 内閣府特命担当大臣
今年度、新たに取りまとめた総合的対策において、教育保育業界における児童への性暴力防止の取組を、横断的に促進するための指針のひな形や事例集について、令和6年度中に作成することを盛り込んでいる。
法案の対象とならない個人が一人で行っている事業者においても、こうしたものを活用いただくことで、児童への性暴力防止に寄与することが可能になる。
それを対外的に説明することにより、保護者等の理解を得ていくことも可能になると考えている。
質問④-1【確認対象の性犯罪歴の範囲を拡大する必要性】
確認対象とする性犯罪歴の範囲について。
下着泥棒やストーカー規制法違反は含まれていない。確認対象に含めることを求めるネット署名が約32,000筆も集まり提出されている。
加藤大臣はどのように受け止め、対応していくか?
〈答弁〉加藤 内閣府特命担当大臣
下着窃盗やストーカー規制法違反の行為を対象確認とすることについては、性的な動機を裁判所が一般的に認定するわけではないことや、特定の犯罪の一部の行為だけを抜き出して対象にすることは、対象の行為であることを誰が判断し、その判断の正しさをどのように担保するか、といった様々な検討すべき課題がある。
確認対象犯罪の拡大については、これらの課題を踏まえ検討する必要がある。
検討すべき課題なんて、無いですよね。
下着窃盗やストーカー規制法違反は、間違いなく性犯罪歴の対象の行為です。誰が判断しても。
質問④-2【確認対象の性犯罪歴の範囲を拡大する必要性】
同様の事例として、衣服や所有物に体液をかけた疑いで逮捕される事案は、器物損壊罪等として処理され、性犯罪歴の確認対象に含まれない。
その理由について、政府は、特定の犯罪の一部だけを抜き出して対象とすることは難しいと述べている。体液をかけるという行為を特定性犯罪に含める必要性について、加藤大臣の見解は?
〈答弁〉加藤 内閣府特命担当大臣
ご指摘のような行為(体液をかけるという行為)を刑法上の性犯罪として位置づけるかどうかについては、具体的な状況・対応等を問わず、一律に性犯罪とすることが適当か、性犯罪とすべき行為を明確に過不足なく規定することができるのか等について、慎重な検討を要するものだ。
体液をかけるという行為にしても、しかり。
だれが判断しても、明らかに性犯罪歴の対象の行為です。
検討の余地なんか、あるのでしょうか?
日本は、性犯罪を軽く見ている、ということが判ります。
質問⑤【犯罪事実確認書の交付の在り方】
犯罪事実確認の結果、犯歴ありとされた場合、その回答内容はまず対象業務従事予定者本人に通知される。
他方、個人の犯歴は、個人情報保護法上、たとえ本人でも開示請求できない。犯罪事実確認書が本人の手元に残るとすれば個人情報保護法との関係で疑義が生じる。
犯罪事実確認書の交付は実際にどのような形で行うことを想定しているのか?加藤大臣の答弁を求める。
〈答弁〉加藤 内閣府特命担当大臣
犯歴がない旨の書面等があるわけではない。だから個人情報保護法との関係でも疑義は生じない。
本人への事前通知方法や事業者への交付方法については、今後、情報セキュリティの専門家や関係機関の意見もお聞きしながら検討する。
質問⑥【日本版DBSの仕組み作り】
イギリスでは、ベビーシッターやチャイルドマインダーが 第三者機関(Ofsted)への登録が義務付けられ、その際、英国DBSによる犯罪歴チェックを受ける仕組みがある。
こうした仕組みを我が国で導入することについて、加藤大臣の見解を伺います。
〈答弁〉加藤 内閣府特命担当大臣
イギリスの「Ofsted」の職員体制は数千人規模で、こうした質の監査という新たな役割を有する組織を、我が国において直ちに構築することには様々な課題がある。
まずは本制度の確実な実施、その上で制度のあり方について今後検討をしていく。
「DBS」という、絶対に必要な仕組み作りに関して、英国のような人数と高い質の組織を「すぐに作れないから」できない、という答弁には、驚きました。
「すぐにできない」からこそ、今すぐにでも「作るための準備」を始めなきゃ!
DBSは、「Disclosure and Barring Service」の略称です。
Disclosureは「開示」。Barringは「禁止」。
犯罪歴の有無を明らかにし、その証明書を提出することで、就労が可能となるシステムです。
スウェーデン、フィンランド、イギリス、ドイツ、フランス、ニュージランドなど、様々な国で採用されています。
「日本版DBS」については、現在、議論中です。(2024年6月現在)
日本では、性犯罪を犯していても「起訴猶予」となる場合があります。そこも「抜け道」となってしまわないよう、引き続き、議論を注視していきましょう。
DBSの仕組み作りも大切ですが、性犯罪を犯してしまった人への治療も必要です。
処罰だけでは、性犯罪は無くなりません。
質問⑦【包括的性教育の必要性】
我が国の小中学校の学習指導要領では、全ての生徒に共通して指導する内容として妊娠の経過は取り扱わないとする、いわゆる「歯止め規定」があるために、こどもたちが性被害を認識できないなどの深刻な影響を受けている。
適切な性教育を行うことで早熟な性体験を遅らせる結果になったことが多くの研究により証明されているほか、ユネスコなどが2009年に策定した「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」で「包括的性教育」、「ジェンダー」「暴力と安全確保」など8つのコンセプトに基づく性教育が提唱されている。
教育現場において男女が共に包括的性教育を学ぶことが重要と考える。盛山文部科学大臣の見解を伺います。
〈答弁〉盛山文部科学大臣
児童生徒間で発達の段階の差異が大きいことから、全ての児童生徒に共通に指導する内容と、個別に指導する内容とを区別して指導することとしている。
全ての児童生徒に共通に指導する内容としては、妊娠の経過は取り扱わないこととしている。
学習指導要領に基づいて、受精・妊娠・性感染症の予防などの身体的側面、異性の尊重・性情報への適切な対処など、指導を行うこととしている。
個々の児童生徒の状況等に応じ、必要な個別指導が行われることが重要。
これは、日本の、性教育ひいては人権教育の軽視です。
「発達段階の差異」とは?
人権教育における性教育は「どの子にも必要」なのは当たり前でしょう。
「個別に指導する内容」とは、どういったものなのでしょう?
(筆者は保護者でもありますが)実際に学校で聞いたことがありません。
性犯罪を防ぐためにも、性教育は必須です。
このように、国がまだ性教育を軽視している状況ではありますが、
日本でも、民間、親、意識の高い先生によって、既に、包括的な性教育の取り組みも行われています!
ですが、やはりどの子にも必要な教育なので、全国で性教育が行われるようにしてほしいですよね。
質問⑧【マインドコントロールによる若年女性の性被害について】
悪質ホスト問題で顕著である、マインドコントロールによる若年女性の性被害について。
中高大学生に被害が生じている悪質ホストなどによる性搾取は悪質化の一途をたどっている。
厚生労働省において、とり得る施策はあるか?
先般、被害者の方々と面会された武見厚生労働大臣に、面会時に感じた思いと併せて、お伺いします。
先の内閣委員会で松村国家公安委員長は、被害者やその家族との面会について「予定を調整する」旨答弁された。
被害者や家族の方々は松村国家公安委員会委員長との面会も心待ちにされている。
その調整状況を松村国家公安委員長に伺います。
〈答弁〉松村 国家公安委員長
(先ほどお伝えした通り、被害者、被害者家族との面会について)現時点では調整に至っていない。
悪質なホストクラブに関して、警察では、これまでもホストクラブやその従業員の違法行為を取り締まっており、風営適正化法に基づく営業の取り消しや停止といった厳正な行政処分を行っている。
海外への売春を斡旋していたグループも検挙している。
一方、女性が売春に至る背景には、さまざまなことが考えられるため、女性の支援のための取り組みを行っていくことが重要。
悪質なホストクラブについて強い問題意識を持っており、まずは厳正な取締りを引き続き行うよう警察を指導している。
家族に面会しない理由が解らないです。
そして、「もう警察が、既に色々とやっている」という答弁…。
そうでなくて、今起きている申告な被害をどうするか、そういう喫緊の課題について、話し合っているのに。
「マインドコントロールによる若年女性の性被害」についての質問に対して、「売春」という言い方がひどいですよね。
まるで、女性に責任があるかのような言い方です。
〈答弁〉武見敬三 厚生労働大臣
(前述しましたが、武見大臣の答弁を、今一度載せておきます。)
悪質ホストクラブの被害者に対するメンタルヘルス対策などについてお尋ねがありました。
悪質ホストクラブの被害者の方々とは、ご家族を含め先月面会をし、その中で、女性が多額の借金を負わされ賠償を強要されていることなどの実態をお伺いし、事態の深刻さを改めて痛感をいたしました。
面会を通じて、こうした被害のあわれた方々の支援のために、心のケアの専門機関と連携することの重要性を改めて認識をし、相談窓口である女性相談支援センターと精神保険福祉センターの連携を推進するなど、相談体制の強化等を図ることとしております。
厚生労働省としては、引き続き、この民間団体、関係機関、関係省庁と連携しながら、悪質ホストクラブ対策にしっかりと徹底的に取り組みます。
(答弁が、松村議員とは対照的ですね…。)
武見大臣が被害者、ご家族と面会をし、実態を知ったうえで、これに取り組むと約束してくれました!
私たち市民も、被害者を出さないために、何ができるか、引き続き、考えていきたいと思います。
コメント