総裁選に出馬したひとり、高市早苗経済安保担当相について、支持者の方々からは「総理になれば、初の女性総理」といった声も上がる一方で、一般の方々からは「総理の器」について疑問視する声が上がっています。
ホリエモンこと堀江貴文さんからは「高市さんだと右過ぎて、一般国民が参加する総選挙は不利だし」とバッサリ。
元東京都知事の舛添要一さんは、高市さんの問題点として、「安倍政治の継承」「右寄り路線」「外交政策」を挙げています。
高市早苗さんのことを良く知らない方々もいらっしゃると思いますので、
実際にどんな信条の方なのか、過去の発言なども含め、紹介していきたいと思います。
自民党の支持者以外の方々は 総裁選の投票をすることはできませんが、解散総選挙が行われた際に、ご参考にしていただければ幸いです。
高市早苗さんはどんな人?
では、高市早苗さんの、実際の過去の発言をご紹介しながら、さっそく見ていきたいと思います。
①メディアに圧力をかける発言があった
高市早苗さんが総務大臣だった2016年、報道に介入する発言がなされて、大きな問題になりました。
2016年2月8日の衆議院予算委員会でのこと。
奥野総一郎議員(民主党)から、こういった質問がありました。
(奥野議員)「憲法9条改正に反対する内容を相当の時間にわたって放送した場合、電波停止になる可能性があるか」
高市総務大臣(当時)は、奥野議員の質問に対して、「放送局が政治的な公平性を欠く放送を繰り返した場合」としたうえで、こう答えています。
(高市総務相)「全く将来にわたってそれがあり得ないということは断言できません」
(高市総務相)「放送法というものをしっかりと機能させるためには、電波法においてそのようなことも担保されている」
「公平性」の判断について高市さんは「国論を二分する政治課題で、一方の政治的見解のみを支持する内容を繰り返す番組を放送した場合」としています。
つまり例えば「政府の見解と違う内容の番組を放送した場合」には、「政府が放送局に対して」、「電波停止を命じる可能性がある」と、予算委員会で発言しているんですよね。
(参考:衆議院/東京弁護士会 2016.2.16 )
高市さんは「(電波停止命令は)放送法/電波法で担保されている」って言うけれど、
実際の放送法で「担保されている」のは、「放送の自律を保障すること・表現の自由」です。
放送法ができた当時(1950年)の政府も、
「放送法1条に放送による表現の自由が根本原則」
「政府は番組に対する検閲・監督は一切行わない」としているよ!
(参考:東京弁護士会 2016.2.16)
東京弁護士会は、高市総務相(当時)の発言は、報道の自由を萎縮させ、知る権利を侵害し、立憲民主主義を損なうものとして、抗議・撤回を求める声明を出しています。
野党議員からも、政府の「放送法違反の判断」についての答弁が、報道の萎縮を引き起こしている問題を指摘しています。
②高市さんは、「村山談話」を否定する発言をしている
村山談話って何?
「村山談話」は、1995年8月15日、戦後50周年の終戦記念日に、自由民主党、日本社会党、新党さきがけの「自社さ政権」で、村山首相が閣議決定に基づいて出した談話です。
「村山談話」は、重要な意味を持ち、歴代の首相に踏襲されてきました。
しかし、高市さんは、その「村山談話」を何度も否定してきた人です。
「村山談話」は、切り取らずに 全文を通して読んでみた方が良い文章ではありますが、ここでは一部抜粋します。
私たちは過去のあやまちを2度と繰り返すことのないよう、戦争の悲惨さを若い世代に語り伝えていかなければなりません。
とくに近隣諸国の人々と手を携えて、アジア太平洋地域ひいては世界の平和を確かなものとしていくためには、なによりも、これらの諸国との間に深い理解と信頼にもとづいた関係を培っていくことが不可欠と考えます。
政府は、この考えにもとづき、特に近現代における日本と近隣アジア諸国との関係にかかわる歴史研究を支援し、各国との交流の飛躍的な拡大をはかるために、この2つを柱とした平和友好交流事業を展開しております。(引用元:外務省HPより「村山談話全文」)
ここでは、近隣諸国との相互理解や信頼が大切ということが述べられています。
平和友好交流の重要性、歴史の共同研究についても示唆しています。
そして、以下では、過去の侵略の歴史の検証、教訓が述べられています。
そして、アジア諸国の人々にも日本国民に対しても、その反省と謝罪、哀悼の意を示しています。
いま、戦後50周年の節目に当たり、われわれが銘記すべきことは、来し方を訪ねて歴史の教訓に学び、未来を望んで、人類社会の平和と繁栄への道を誤らないことであります。
わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に誤ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします。
また、この歴史がもたらした内外すべての犠牲者に深い哀悼の念を捧げます。(引用元:外務省HPより「村山談話全文」)
それから、核兵器廃絶についても述べられています。
敗戦の日から50周年を迎えた今日、わが国は、深い反省に立ち、独善的なナショナリズムを排し、責任ある国際社会の一員として国際協調を促進し、それを通じて、平和の理念と民主主義とを押し広めていかなければなりません。
同時に、わが国は、唯一の被爆国としての体験を踏まえて、核兵器の究極の廃絶を目指し、核不拡散体制の強化など、国際的な軍縮を積極的に推進していくことが肝要であります。これこそ、過去に対するつぐないとなり、犠牲となられた方々の御霊を鎮めるゆえんとなると、私は信じております。(引用元:外務省HPより「村山談話全文」)
この村山談話は、歴史的意義を大きく評価されてきました。
2021年の自民党総裁選で高市氏を全面支援していた安倍首相も、村山談話を引き継ぐ、と何度も発言しています。
高市さんの「村山談話」否定発言
高市早苗さんは、度々、その「村山談話」を否定する発言をしてきています。
自民党の政調会長時代にも、テレビで発言をしていました。
2013年5月12日のNHK「日曜討論」で、村山談話の中に「国策を誤り」という文言があることに触れ、持論を展開しています。
(高市さん)「当時、資源封鎖された中で抵抗せずに日本が植民地となる道を選ぶのがベストだったのか」「ちょっとおかしい」
また、番組終了後にも福井市内でこのように発言しました。
(高市さん)「『侵略』という文言を入れているのは私自身しっくりきていない」
2013年5月10日の記者会見で、菅官房長官が「村山談話を全面的に引き継ぐ」と答えていた矢先の出来事でした。
自民党の石破茂幹事長は、高市さんに対し
誤解を招く発言は慎んでもらいたい
と苦言を呈しています。(参考:日本経済新聞 2013.5.14 )
高市さんは、2002年にも、自身のブログに村山談話を否定する内容を投稿、
また、2013年5月13日の取材にも、「(村山談話を否定する)考えは変わらない」とハッキリと答えています。(参考:KYODO NEWS 2013.5.13 )
お時間のある時に、村山談話全文、ぜひ読んでみて下さい。
それから、
こちらは、2015年6月9日に日本記者クラブで行われた、村山富市元首相と河野洋平元衆議院議長の講演会です。
当時のことを、当事者であるお2人が語っています。
真剣さが伝わってくる動画です。
③マイナンバーカードと銀行口座紐づけ「義務化したい」
皆さんご存知の通り、マイナンバーカード作成は、任意です。
2020年6月、高市総務相は、閣議後記者会見で、このように発言しています。(参考:総務相 2020.6.9 )
(高市総務相)「お一人1口座をマイナンバーに紐付けることは、できれば義務化をさせていただきたいと思っております。」
(引用元:総務相 2020.6.9 )
高市総務相は、あくまでも「利便性のため」「親が他界した際に、口座の所在が分かる」と強調しましたが、銀行口座とマイナンバーの紐づけはリスクがあり、東京弁護士会も、警鐘を鳴らします。
国家権力が国民の情報を利用しやすくなるということは、裏を返せば国民の一人一人の情報の監視が以前より容易になるということです。これは監視国家化につながります。
(引用元:東京弁護士会 2022.1月号)
マイナンバーをめぐる問題には、まだまだ議論が必要ですよね。
④「重要経済安保情報保護法案」をめぐる発言
2024年5月に参院本会議で可決した「重要経済安保情報保護法案」。
この法案は、非常に大きな問題をはらんだまま、可決されました。
この時、この法案をめぐる高市氏の発言も、注目されました。
「重要経済安保情報保護法案」とは?
経済安全保障分野の機密情報を扱う際に、民間人を身辺調査できる「セキュリティー・クリアランス制度」を創設する法律です。
「特定秘密保護法」を参考に立案されており、身辺調査によるプライバシーの侵害が懸念されています。
2024年5月10日に成立、2025年5月17日までに施行。
民間事業者が「重要経済安保情報」の提供を受けるために、行政機関から認定を受ける必要があり、事業者だけでなく、従業員にも「個人に対する調査」が行われます。
調査項目の中には「本人と家族の 性別、旧姓・通称、国籍、帰化歴、外国籍の有無・歴」や、「精神疾患の受診歴」が含まれています。
「総合評価によって判断されるため、“外国人”が一律に排除されているわけではない」とされていますが、調査項目に入っていること自体が、差別につながる可能性があり、人権や自由を侵害しかねないと懸念されています。
(参考:東京新聞 2024.5.11 )
国籍だけでなく、精神疾患、性別も「調査」対象だとは…。
いかに差別的か分かりますね。
さらに「特定秘密保護法」では、政府の指定について「情報監視審査会」がチェックする仕組みがありますが、「重要経済安保情報」にはそれがありません。
立憲民主党の後藤祐一議員も、それについて指摘しています。
後藤祐一議員「諸外国と比べてもおかしい。重要経済安保情報を審査会の対象にすると不都合があるのか」
(引用元:東京新聞 2024.3.28 より)
それに対して、高市経済安保担当相はこのように述べています。
高市早苗経済安保担当相「(国会で)特定秘密と同様の措置を講じれば、重要経済安保情報を(国会に)提供することになる」
(引用元:東京新聞 2024.3.28 より)
と、ハッキリ言っています。
国会がチェックする必要性を、ハッキリと否定していますね。
この法律をめぐっては、国会でだけではなく、多くの識者も懸念を示しています。
日弁連の斎藤裕副会長は、国の機関による 市民への権限行使の乱用を防ぐ仕組みが、全く議論されていないことを指摘しています。(参考:東京新聞 2024.3.31 )
また、事業者にとっては、自社の情報保全が強化されるといったメリットに対して、適性評価は個人のプライバシーに関わる、業務には 適性評価で認定を受けた人しか従事させることができない等々、デメリットの多さが指摘されています。(参考:BUSINESS LAWYERS 2024.8.19 )
⑤ユダヤ人人権団体から抗議を受けた本の推薦文を書いていた
ユダヤ人人権団体から抗議を受け、2カ月で絶版となった、とある書籍(1994年に出版)に、高市さんが 推薦文を書いていたことが、今でも話題に上っています。
この時、すでに高市氏は衆議院議員でした。
この本は、驚くことに、ヒトラーの戦略を高く評価し、現代に用いて選挙で当選する手法にしようという書籍だったんですね。
著者は一般市民ではなく、これまた驚くべきことに、なんと自民党都連事務局広報部長(当時)の小粥義雄(おがいよしお)氏でした。
ユダヤ人人権団体(サイモン・ウィーゼンタール・センター)は、出版中止を求める抗議文書を出し、駐日イスラエル大使館参事官のヤコブ・ケイダール氏らも自民党都連を訪れるなど、当然大きな問題になり、本は絶版、回収となりました。
2014年にも、総務大臣(当時)だった高市さんの推薦文が、再度 問題視されています。
⑥夫婦別姓に反対したいために「不動産登記できる」とうっかり発言
何年も議論され、市民が待ち望んでいる「選択的夫婦別姓制度」。
小泉進次郎氏は、総裁選の出馬会見で「議論が始まって30年経つ」とし、「旧姓併記案」に関しても、旧姓では多くの銀行で口座が作れない、不動産登記が出来ない、契約書のサインも認められないことがある、と数々の困難を挙げていました。
高市経済安保担当相、進次郎さんの会見を あげつらう形で…
(高市氏)「候補予定者の方に『(旧姓では)不動産登記ができない』と答えた方がいたが、不動産登記できる。4月から旧姓でできるようになった」
(引用元:東京新聞 2024.9.11 )
…と発言しています。
しかし、法務省民事局は、「不動産登記は、旧姓のみでは登記できない」と、高市氏の発言を否定しています。
高市氏は 夫婦別姓制度に反対しているため、あくまで「旧姓使用の拡大」だけで済ませたかったんですね。
高市さん、ご自身が 山本拓元衆議院議員と結婚した時に、こう言っています。
「高市早苗」から「山本早苗」に変わったんだなあ・・と、じわじわ嬉しくなってきているところであります。
(引用元:高市早苗衆議院議員 公式サイト 2004.9.23 )
このように、妻や夫と同じ姓になって嬉しい、という人もいますし、逆に長い間 慣れ親しんだ自分の姓を捨てることを強制されるのが悲しい、という人もいます。
運転免許証など、何から何まで新姓に変更する手続きをしなければならないことが大変だったり、職場で「旧姓」を使っているものの、給与、保険関係の書類は「戸籍名」となるため、混乱をきたすこともあります。
「選択的」は、夫婦同姓が良い人は同姓が選択できるので、反対する理由は無いですよね!
高市さんはどんな人?まとめ/外交の不安
以上、高市早苗経済安保担当相の信条や、過去の発言をまとめてみました。
高市さん、総裁選立候補の会見では「日本をもう一度世界のてっぺんに」とも発言しています。
日本を含む「世界」とは、グローバルに人々が動き、ビジネスでも草の根でも国同士の繋がりが重要な今の時代です。
どこかの国ひとつが「世界のてっぺん」になることではなく、地球市民として、共に学び共に発展していくことを目指すのが、これからの人類の目指すところですよね。
元防衛相の森本さんは、高市さんの外交について、こう危惧しています。
森本敏 元防衛相は、実際の閣僚経験者として危機感をあらわにし、警鐘を鳴らしました。
(森本さん)「(高市氏が、靖国神社参拝について)個人がやるならいいんです。内閣総理大臣という肩書で行くということが、いかに日本の国益を損なうか」
(森本さん)「わざわざ日本の方から起こされた外交上の欠損を、アメリカも容認しないと思いますよ。」
反町さんの「総裁選の戦術としては、このタイミングで持論を吐露するのは功を奏している。そこはどうですか?」の質問には、森本さん、「いやいや、ちょっと待ってください!」とたしなめます。
(森本さん)「総裁選で終わるんじゃないんですよ、次の日から総理大臣として政治をやらないといけないんです。」
「日本にとっての本当の国益、それを総理としてどう考えるか、という立場に立って、やっていかないと。人気が取れる1つのテーマだけを取り上げて票が集まるなんていうのは、政治家のする事じゃありませんよ。」
その通りですね。
投票する人は、その重みをしっかり見据えて投票していただきたいです。
また、元東京都知事の舛添要一さんは、高市さんの、外交面での経験不足を不安視し、このように述べています。
(舛添さん)「しっかりと外交を学んでいただいて。日本の国益を守るとともに国際社会の平和と繁栄に自分が貢献するだという姿勢を見せてほしいと思います」
(引用元:東スポWEB 2024.9.19 )
総裁選に出馬したとあれば、極右の一議員のままで良いわけではありませんので、高市さんには しっかりと学んでほしいですし、森本さんが危惧している状況にならないように、周りの人がしっかりしなければならないところだと思います。
私たち市民もしっかり学んで、総裁選を経たその後の、解散総選挙の時には、しっかり投票してきましょう。
「尊敬できる政治家がいない(ので投票迷う)」という方は、「反対票を投じる」だけでも大きな意味があります。
2024年総裁選に立候補している小泉進次郎さんについては、こちらです↓
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